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喉が痛い。
頭も痛い。
「…風邪？」
そう呟いた声は枯れていた。
（どうしようか…動きたくはないけど、今日はバスケのテストもあるし…）
「…とりあえず行っておくか」
いつものように支度をして家を出たところまではよかった。
「…」
やっぱり休んだ方がよかったかもしれない。
ちゃんと地面に足がついてる感じがしない。
集中力が乱れて、余りある魔力が流れ出ていくのを止められない。
（…まあ、一般人には見えないからいっか、…）
頼りない足取りで校門をくぐった少女を一人の少年が見ていた。
（ルナかな？ずいぶん様子がおかしかったけど。）
教室に入ると、ククールと目が合った。
「おはよー」
「…おはよう」
ドサッと鞄を下ろす。
「ルナ、風邪でも引いたか？顔色悪いし、声ガラガラじゃん」
「…そうみたい」
少し喋っただけですぐに咳が出てしまう。
「…お前日直だぜ、今日。そうだ、俺が代わりにやってやろうか？あとで俺に付き合っ「結構よ」
日誌を取りに職員室に向かう。
長い１日が始まった。
・・・・・・・・・・
「はい、次ー」
普通のシュートもドリブルシュートも外すことなく決める。
周りの女子からおぉー！と声が上がる。
試合中にはスリーポイントも決まったし、意外となんとかなりそうだ。
ただ、コートの中を走ってる途中で足がもつれそうになったり、不安な要素も残ってないこともなかったが。
教室に戻る途中にククールと出会ったので一緒に戻ることにした。
「お前なあ、具合悪いのはもういいわけ？」
「たぶんもう大丈夫なは、ず…」
…あれ…
床が回って…？
「あのなあ、これのどこが大丈夫だって？」
よろけた私を支えてくれたのはククールだった。
「あ…ごめん」
「いいって。つかさ、鞄持っていってやるから保健室行ってこい」
「…分かった」
たかが風邪と侮ってはいけなかったようだ。
そのまま素直に保健室へ行く。
ガラッ
「どうしたの？」
「ちょっと具合悪くて…」
「確かに顔色悪いわね。あ、熱計ってくれる？」
「あ、はい」
「さっきは体育？」
黙って頷く。
ピピピ
「…38,6℃ね。どうする？帰った方が楽だと思うけど。」
「できれば帰りたいです…」
そのときククールが保健室に入ってきた。
「はい、鞄。あ、先生、俺送っていっていいですか？」
「…しょうがないわね。話は通しておくから、ルナは早く着替えなさい」
手早く着替えて学校を出る。
鞄はククールが持ってくれた。
普段の倍くらいかかってようやくマンションに着いた。
もう昼休みも終わりかけだ。
わざわざ部屋の前まで送ってくれた彼に礼を言いつつ鞄を受け取る。
「…ありがと。助かった」
「気にするな。それじゃ、お大事に。なんかあったら呼べよ？」
「たぶんないから大丈夫よ」
ククールが戻るのを見送ってから部屋に入る。
制服のまま、ソファにダイブした。
・・・・・・・・・・
気がつくと、部屋はすっかり暗くなっていた。
眠ってしまっていたらしい。
そのとき、インターホンが鳴った。
（誰よ、こんな時に…）
「…はぁい」
「ルナ？エイトだけど、開けてくれない？」
「？…分かったわ」
なんで急にエイトが来たんだろう…？
とりあえずドアを開けた。
「…何？」
「今朝見かけたとき具合悪そうだったし、ククールから早退したって聞いたからお見舞いがてら寄ってみたんだけど。急に押しかけてごめんね？」
「…別に。上がって」
「お邪魔します」
２人でリビングに入る。
「何か食べられそう？さっきスーパー寄ってきたから食材はあるんだけど」
ジャストタイミングでおなかが鳴る。
「あはは、決まりだね。キッチン借りてもいい？」
「…どうぞ」
エイトがキッチンに立つ。
「…まさかだけど、料理できないとかないわよね…？」
「まさか。一応僕も一人暮らしだからね、料理くらいできるよ」
次第にいい匂いが漂ってきた。
「さすがね。」
「まあね。…はい、出来上がり。あ、僕も一緒に食べてもいい？」
「もちろん」
エイトの作ってくれたお粥は、あっさりしてて美味しかった。
「ありがと。…何だか眠たくなってきたわね。寝ようかしら。」
「そう？帰った方がいい？」
「…どっちでも、」
「！おっと」
そのまま意識を失ったルナを抱きかかえる。
スースーと寝息が聞こえる。
ソファに横たえて、そっと髪を撫でる。
「早く治しなよ？」
静かになった部屋には、ルナの寝息とクス、という静かな笑いだけが残った。
――――――――――
（お前、ルナんちに上がりこんだんだってな）
（君だってそうしようとしてたくせに）
（ギクッ）
（今度、一緒に出掛けてもいいって言ってくれたんだ）
（お前マジなにしたんだよ…）
――――――――――
→あとがき
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