捧げ物
氷雨様へ相互記念
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「あら、何かしら…リース?」
宿屋の入り口から正面を見ると、リースが飾ってある。
「お、もうすぐクリスマスか。」
とレグルスが言えば、
「わーいクリスマス〜!」
とカペラが飛び跳ねる。
「いらっしゃいませ…あ、ディアス!久しぶりね。」
「やあリッカ。久しぶり。」
リッカの宿屋に泊まるのはいつぶりだろうか。
しばらくカルバドの集落あたりに滞在していたのだ。
「ちょうど良かったわね、リッカ。」
隣でルイーダさんとロクサーヌさんが微笑む。
頭の中に疑問符を浮かべていると、リッカが口を開いた。
「ねぇディアス、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけどいいかな?多分量が多いからできればジュノさんたちにも手伝ってほしいんだけど…」
1人で出来ないほどの仕事って一体どんなものなのだろうか…
と思いつつ、リッカの話に耳を傾ける。
「実はね……」
「……え、クリスマスパーティー?」
「うん。それでね、宿泊中のお客様とか城下町の人たちに招待状を配ってきてほしいの。お客様には配ってきたんだけど、城下町の人たちには配れてなくて…ダメかな?今頼めるのディアスたちしかいないんだよね…」
「いーじゃん!やろうよ!!」
真っ先に声を発したのはカペラ。
「いいんじゃない?たまには生き抜きも必要でしょ?」
とジュノ。
レグルスもうんうんと頷いている。
「分かったよ、リッカ。いつも安く泊めてもらってるしね。」
「ホント!?ありがとうディアス!!じゃあ、配りに行く前にロクサーヌさんのところに行ってきてくれる?言えば分かると思う。」
「分かった。」
隣で飛び跳ねているカペラとそれを微笑ましく見つめるジュノとレグルス。
クリスマスとはそんなにテンションが上がるものなのだろうか。
…天使界にはない文化だからかな、よく分からないや。
「あら、ディアスさん。どちらへ?」
「あ、ロクサーヌさん!リッカに頼まれたんですけど…」
「あぁ、アレですね。少々お待ち下さい。」
危ない危ない、ロクサーヌさんのところを通り過ぎるところだった。
少しすると、ロクサーヌさんが何か持ってきた。
赤い服だろうか。
「お待たせ致しました。リッカさんに先に押さえておくよう言われていた品ですわ。お代は結構ですから、着てみて下さいな。」
「え、着るんですか!?」
「ええ。」
ロクサーヌさんが笑顔で言うものだから断れなかったじゃないか…
「…ロクサーヌさんってさ、たまに怖いよね…」
みんなで激しく頷いてしまったのはここだけの話。

数分後。
ハイテンション気味なカペラと恥ずかしそうなジュノが出てきた。
「お、女性陣可愛いね〜!」
「どこ見てんのよー!」
カペラがレグルスをはたく。
ハイテンションだったせいか少々痛かったらしい。
隣で唸っているレグルスは置いといて。
「…でもこれちょっと短すぎじゃないかしら?」
「そんなことないと思うけどな…」
普段は超がつくほど冷静沈着なジュノがちょっとでも赤面するなんて珍しい。
僕たちがロクサーヌさんに渡されたのはサンタの服一式。
確かにこれを着て城下町を歩けば確かに目立ちそうなのだが。
僕は帽子付属の髭をつまんで、
「…ね、これも付けるべきなのかな…?」
「当ったり前じゃん!ちょっとウケるしね!」
やっぱりそうなのか…
みんなでワイワイ騒いでいると、いつの間にか近くまで来ていたリッカが、
「わー、みんな本物のサンタクロースみたい!じゃあ、これお願いね。」
と言ってチラシの山を渡す。
「あ、掲示板にも貼っておいてくれるとありがたいな。」
「分かった。それじゃあ行ってくるね。」
僕たちは夜のセントシュタインに繰り出した。



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