捧げ物
美森様へ相互記念
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久しぶりに2、3日ゆっくりできそうだ。
散歩がてらバザーに行こうということでサザンビーク城下に出てきた私とククール。
こうやって過ごすのもいつぶりだろうか。
本当は2人きりで過ごしたかった、なんて言ってやらないけど。

「おいおいゼシカ、そんなにウロウロしたらはぐれるだろう。ほら。」

スッと差し出された手。

「もう、やめてよ。私だって子供じゃないんだから。」

払いこそしなかったが、私から手をとることもなく。
(…素直じゃない。)
けれどククールのほうはそんなことは意に介した様子もなくただただ肩をすくめるばかり。
それでも私の隣にいてくれる。

綺麗なアクセサリーの店に、可愛い小物の店、豪華なドレスや高価な鎧を取り扱う店。
私はウィンドウショッピングを楽しんだ。

一通り見て回ったところで目に入った食べ物の屋台。

「ゼシカ、喉乾いただろ?俺が買ってくるからそこのベンチで休んでろよ。」
「うん、ありがと。」

ククールは人混みの中に消えていく。
私はその背中を見送って、近くのベンチに腰を下ろした。
暖かい日差しが降り注ぐ。
さっきククールに見つからないようにこっそり買っておいたブレスレットをいつ渡そうか考えているときだった。

「よう嬢ちゃん。」
「1人かい?」

酒臭いオヤジと荒くれが声をかけてきた。
当然、無視を決め込む。

「あぁ?口が利けねぇのかよ?」
「お、こいつよく見たらべっぴんさんじゃねぇか。」

さらにガラの悪い野郎が2人加わる。
ククールはまだ帰ってこない。

男たちはまだ私につきまとっている。
動こうとしない私にしびれを切らしたのか、強引に私を連れて行こうとする。
私のイライラも限界に達した。

「触らないで!この下衆野郎が!!」

思わず立ち上がって叫んだ。
周囲の視線が痛い。

「…テメェ今何つった?」
「もっかい言ってみろや、えぇ?」

こいつら、ドニの奴らとは格が違う…
言ってしまったものは取り消せない。
…どうしよう、怖い…

荒くれの手が私を叩こうと上げられる。
思わず目を瞑ったそのとき、

「ゼシカ!!」

今の私を安心させるに最もふさわしい声の主がようやく姿を現した。

彼が現れてからこいつらが地面に転がるまで1分もかからなかった。
それから放心状態で突っ立っている私を優しく抱いた。
せき止められていた涙が今になって溢れ出す。

「ゴメンなゼシカ。俺のせいで怖い思いさせちまって…。」
「…もう、遅いわよ…ククール…」
「…………。落ち着いたか?」
「ん…ゴメン…。…あのさ」
「どうした?」
「…買い物って気分じゃなくなっちゃった。宿屋に戻らない?」
「そうだな。歩けるか?」
「ええ。ありがとう。」
今度は差し出された手をしっかり握り返した―――。



→あとがき
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